神戸アートビレッジセンター 歌うシャイロック

神戸アートビレッジセンターという劇場に行ってみました
昔は小劇場にも足繁く通いましたが、最近は大劇場のみ、、
JR神戸駅 高速神戸駅から5分ほどのところでした
地下繁華街からも遠く でもあちらの方かと歩いていけば、また別のにぎやかな商店街がありました
ホールは2階で144席だそうで こじんまりしていてどの席でも特等席といった印象です
前の方の席でないと足の悪い人には辛そうではありますが、、


兵庫県立ピッコロ劇団 第57回公演ピッコロシアタープロデュース
「歌うシャイロック」 作・演出:鄭 義信(原作:シェイクスピアヴェニスの商人』)

剣幸氏が出演されるときき、行きました
以前にも書いていますが、私にとってのミー・アンド・マイガールのビルといえば剣幸 マリアおばは春風ひとみ
初演の印象が強すぎて 他の方のをみても、音楽を聴いても ここが変わった、、とつい思ってしまいます
天海祐希氏のビルもみましたが、今ならまた違うのでしょうが、その頃は彼女もまだ年齢的にも若い時代だったので、、
初演時のビルとマリア叔母の間に流れるなんともいえない人間味にいたく感動した記憶が強く残っています


今回は”もう一つのヴェニスの商人”とかかれているお芝居
最近はアル・パチーノの映画にしても、シャイロックを全くの悪役にしないという流れになっているようです
そもそも
ヴェニスの商人ユダヤ人差別が激しい題材とは言われていましたが、それ以外にも
遺言によって夫選びを指定される女性差別もあるのだな、、と
時代の流れも感じました。
シェイクスピアの時代は今のようにネットでつながっていたわけでもなく、イギリスにいたシェイクスピアがどこまでベニスの事情を知っていたか
本当にそこまでの差別があったかは疑問と言われているようですが、まあ、話は面白おかしかったらいいのでしょうから
時代に合わせてアレンジ 後日談があるのは楽しみです
だって、シェイクスピアちょっと飽きちゃいましたから、、


今回は全て関西弁の台詞回し
衣装はユダヤ人たちは日本の昭和の時代の衣装 シャイロックは 吹けば飛ぶような将棋のコマを、、と歌うようなキャラクター
日本の昭和の高利貸しのイメージ
貴族は背広
ポーシャは真っ白の映画マイフェアレディでイライザがの最後の晩餐会で着ていたみたいな体の線が出るドレス 
ネリッサは(劇団新幹線の右近氏)胸にリボンの濃い色のロングドレスでありました
そのほかのポーシャの召使いは男性陣は女役で 女性のメイド役の服装 女性陣は男役で男性の執事の役の服装でした


昔 ライオンキングを上演する前の頃に劇団四季ヴェニスの商人を見にいったことがありましたが、
大道具もなく小道具も3つの箱のみ という劇でしたが、、
今回は大道具あり 大きな移動式階段が2つ 組み合わせの台が3〜4個 簡易船など
ただ、元気一杯役者さんが走り回ると階段が揺れて、、、
小演劇団の良さとも言いますが、、余計に迫力がありました


原作と違うのがシャイロックの娘ジェシカのこぼれ話 その後などがあったこと
ジェシカはピッコロ劇団の看板女優さんが演じられ
それだけにポーシャと同じく年齢的に?ということがありますが、
歌舞伎や四季のようにスルーするのではなく、ポーシャは誰も箱を当てられることなく年齢を経て今や00歳?
ジェシカもシャイロックの娘ということで敬遠され、、等説明の台詞があり、道理にかなった設定になっていてさすがと、、
ジェシカの夫となるロレンツォ(ロレンゾー)
原作にはシャイロックの大事な宝石を猿一匹と交換してしまう夫婦の散財ぶりという1行しか出ていませんが、
今回の劇では掘り下げて急に大金を手にしたものの末路が描かれていて、さもありなんと、、
そのことを知った、シャイロックの悲しみは深くなる
また、原作では裁判で半分は国に 半分はアントーニオへと行くシャイロックの財産を
アントーニオが辞退し キリスト教に改宗させるくだりが改変されていました
そのぶん アントーニオが今後の自分やシャイロックの行く末について深く考える余韻を残していました
確かに、キリスト教に改宗したら命は助かっても今後利子をとることは許されないことになるので、
生活が成り立たなくなり シャイロックは生きながら死んでいる状態になるわけですから、同じことかと、、
見せかけだけのハッピーエンド キリスト教徒アントーニオの善行もどき?にするよりは深い結末だったと思います


関西弁と吉本的なノリ パワーが良かったです
私が関西人ということもあるのでしょうが、本当に心情がしっくりと入ってくる台詞でした。
剣氏も相変わらずのコメディエンヌぶり 昔のミーアンドマイガールの頃と変わらないですね(スタイルの良さも変わらず)
人情もののコメディーがよく合いますね ハロードーリーも見たかったです
本当に懐かしく観させていただきました
3時間の公演でしたが、皆様 後ろの席までパワーが伝わってくる熱演でした
チラシに
「嫌われ者の高利貸し 娘は男と逃げる でも人生は続く」 と書いてありました
悲劇ながらもその中で前向きに生きていこうというメッセージも伝わり なかなかラストまで観させる舞台でした。